晋山窯ヤマツの「世話焼き」サプライチェーン
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- 量産と小ロットの両立が生み出す~晋山窯ヤマツの「世話焼き」サプライチェーン~
『Frustum』シリーズを作る、岐阜県土岐市の美濃焼メーカー、晋山窯ヤマツさんを訪問しました。
掲げるコンセプトは、「幸せになるための『世話』を焼く」。
土屋、型屋、釉薬屋、さらには「マグカップの取っ手だけを作る専門の型屋」まで、細分化された分業制が特徴の美濃焼産地において、分業先の職人、自社、そして売り手(買い手)のすべてが幸せになる新たなサプライチェーンを構築する晋山窯ヤマツさん。量産体制という土台も持ちながら、なぜ小ロットや適正価格での自社ブランドに力を入れるのか。代表の土本さんの「世話焼き」に迫ります。
航空機内用の食器2万個から、展示会用の5個まで。“作り手を幸せにする”柔軟な生産体制
工場に入ってまず案内いただいたのが、量産を支える自動化された工程です。事業の約7割を占めるのは、業務用のOEM生産。
例えば、航空機の機内食用食器などは、1時間に600個以上を成形する自動製造機を使い、2ヶ月で2万個という大ロットの製造が可能。確かな品質で大量の器を安定供給する力は、晋山窯ヤマツさんの大きな強みです。
一方で、量産だけでなく「海外の展示会に5個だけ出展したい」といったデザイナーからの極小ロットのオーダーにも柔軟に応えています。 それを可能にしているのが、5年前に導入したという小さな窯の存在です。
大きな窯と、小さな窯を使い分けることで、窯の火を落とさず、細かなオーダーや新商品にもスピーディに対応できる体制を整えています。
「作り手の新しい挑戦を、小回りの利く生産体制でサポートしたい」。
量産ラインと小回りの利く小ロットラインを共存させることで、デザイナーやブランドといった“作り手”と晋山窯ヤマツさんの双方がWin-Winとなる関係性を築き上げています。
職人の「1日3万円の仕事」を叶える“分業先を幸せにする”自社ブランド「Frustum」
ヤマツさんのコンセプトを最も体現しているのが、自社オリジナルブランドの茶器シリーズ「Frustum(フラスタム)」の土瓶の開発エピソードです。
泥を型に流し込む「ガバ鋳込み」という製法で作られる同シリーズを担うのは、外注先である83歳の熟練職人です。かつてこうした手仕事の外注費は、その技術や工数に見合ったものとは言えない低いもので、職人の後継ぎが育たない一因となっていました。
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「外注さんがいなかったら、
うちは飯が食えない」そう語る土本さんは、Frustumの価格を「売れそうな価格」から決めるのではなく、「みんなが喜ぶ適正価格」から積み上げるという方法をとりました。職人さんに「いくらで仕事がしたいか」と尋ねたところ、「1日3万円の仕事をしてみたかった」という答えが返ってきました。職人さんに適正な報酬を支払い、そこから逆算して売値を定めた結果、Frustumの価格は美濃焼の相場から大きく外れることになりました。当初、地元の商社からは「高すぎる」と見向きもされなかったものの、自ら東京の展示会に出展し、見事に高い評価を獲得。今では年間1,000個以上が売れるヒット商品へと成長しました。
自社検品ルームの新設と直接販売“使い手を幸せにする”産地の常識破り
美濃焼産地には昔から、「サンテナ」と呼ばれる通い箱に商品を詰めて置いておくと、地元商社が引き取りに来るという独自の出荷文化があり、現在も産地の9割以上がこのシステムを利用しています。メーカー側は下代だけをつけ、最終的にどこでいくらで売られているのかすら知らないのが当たり前だったといいます。
しかし晋山窯ヤマツさんは、自社ブランドや新しいものづくりを広げていくにあたり、この体制に一石を投じました。倉庫を改装し、自社内にエアコン完備の「検品・梱包・出荷室」を新設したのです。自らの目で丁寧に検品し、一つひとつパッケージングをして、お客様へ直接届ける。メーカー自らが販売価格を設定し、価値を直接伝えるこの体制を持つ企業は、美濃の産地でもまだ1割に満たないそうです。
試作室から生まれる新しい美濃焼の可能性“未来を幸せにする”新しい挑戦
最後に見せていただいたのは、事務所の裏にある小さな試作室。土本さんの遊び場のような位置づけのこの部屋では、従来の製品とは一線を画す新しい取り組みが行われています。
不要な食器を回収・粉砕し新しい土に混ぜ込んで焼き直すリサイクル土のプロジェクトや、処分に困るコーヒーやお茶の出がらしを粉末状に乾燥・調整し、釉薬の中に混ぜ込んで焼き上げるプロジェクトなど、環境に配慮したサステナブルな挑戦も次々と始めています。
晋山窯ヤマツさんへの訪問を通じて見えてきたのは、分業制という美濃焼最大の強みを心からリスペクトし、共に生き残ろうとする覚悟でした。安定した量産体制で足元を固めながらも、小ロットOEMでクリエイターの挑戦を支援する。そして、自社ブランドを通じて職人の「やりがい」をそのまま価格に反映させ、自ら検品・梱包し、手渡すように価値を届ける。
分業先の職人、晋山窯ヤマツさん、そして売り手と使い手。晋山窯ヤマツさんが焼いているものは陶磁器のみならず、関わるすべての人を笑顔にし、産地の未来を切り拓くための、力強くて温かい「世話焼き」でした。
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