さんち研修旅行 中外陶園
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- 「中から外へ」から「中から中へ」~中外陶園が受け継ぐセトノベルティの歴史と、進化する手仕事~
瀬戸で創り続けられてきた招き猫を、現代の多様な暮らしに寄り添う新しい招き猫へ進化させた『SETOMANEKI』。その『SETOMANEKI』を作る愛知県瀬戸市の陶磁器メーカー「中外陶園」さんを訪問しました。かつて「セトノベルティ」と呼ばれ輸出用陶磁器で隆盛を極めた産地の歴史と、その中で培われた産地ならではの緻密な技を現代に生かす中外陶園さんの歩みをたどります。
スケッチ1枚から西洋を想像した「中から外へ」、そして「中から中へ」の転換
瀬戸の地はかつて、陶磁器製の置物や人形を指す「セトノベルティ」の生産で栄えました。中外陶園さんもその本流の下請けとして、アメリカやヨーロッパ向けのコピー品のような製品を大量に製造していた歴史を持ちます。当時はインターネットもない時代。海外から送られてくるたった1枚のスケッチをもとに、西洋のダンスや文化を想像し、洋書を読み漁りながら、見えない裏側まで作り込む原型製作の技術を磨いていきました。
また、本物のヨーロッパ製陶磁器を買えないアメリカの移民層に向けた需要などもあり、朝晩問わず大量にものを作り続ける過酷な時代でもありました。
同社の「中外陶園」という社名も、まさに「日本で作ったものを海外に輸出する=中から外へ」という意味を込めて名付けられたものです。
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「中から中へ」の転換自社ブランド「薬師窯」誕生
しかし、プラザ合意による急激な円高で輸出のメリットが失われ、産地は甚大な打撃を受けます。その時、2代目と現会長が下した決断が「日本人が豊かになるのなら、日本人に向けたものを作ろう」という「中から中へ」の転換でした。
西洋の飾り物を作ってきたノウハウを、日本の五月人形や雛祭り、お月見などの節句飾りに置き換え、立ち上げた自社ブランドが「薬師窯」です。
敷地内にある目の病に効く薬師如来の祠に由来し、「焼き物で皆さんの目を癒やしたい」という願いが込められたこのブランドは、現在の中外陶園さんの屋台骨となっています。
瀬戸の土だから実現できた、
美しいフォルムを生む「アタッチ」技法
中外陶園さんの陶磁器は石膏型を用いた「鋳込み」という製法で生み出されています。そして瀬戸焼最大の特長とも言えるのが、「アタッチ」と呼ばれる技法です。
異なる型で作られた本体と手などの別パーツを後からくっつける技術のことです。
他産地の招き猫は土に粘り気がなくアタッチができないため、手が顔にくっついた丸みを帯びた形をしています。一方、瀬戸の招き猫はアタッチを用いることで手が顔に触れない独立した表現が可能となり、猫背で顔が小さい、本物の猫のような細身で美しいフォルムが特徴となっています。
中外陶園の技術が光る「SETOMANEKI」誕生の現場
近年、中外陶園さんでは自社ブランドをさらにアップデートさせた「SETOMANEKI」や、tupera tuperaさんをはじめとする現代クリエイターとのコラボ作品に力を入れています。中外陶園さんの製品生まれる、須原陶磁工房を視察させていただき、これらの製品を生み出すための工夫が凝らされた現場を目の当たりにしました。
高い品質の基礎となる徹底的に整理された工房
視察でまず驚いたことが中外陶園さんの製品を生みだす「須原陶磁工房」の綺麗さ。工程ごとに区分けされた作業室が設けられ、工程に必要な道具や備品のみ置かれていることで作業する職人が集中できる環境が整えられています。
すべての要となる鋳込み・型抜き
陶磁器の原料となるのは不純物を抜いた瀬戸の土に水を加えた泥しょうです。湿度など様々な要因を見極め水分量などを調整します。ここで重要となるのが泥しょうを型に流し込む速さの微調整。流し込むスピードが速すぎると気泡が入り、遅すぎると段々になった層ができてしまいます。絶妙な流速加減が均一な表面を実現します。
鋳込みから時間を置き、鋳込み口から見える土の乾きを判断し、型から外します。
瀬戸焼の真骨頂!アタッチ作業
アタッチの工程では、ただパーツをくっつけるだけではありません。焼成時に内部の空気が膨張して爆発しないよう、接着する面に見えない空気の通り穴を開け、本体と正確に繋ぎ合わせるという非常に細やかな手作業が行われていました。
また、型の継ぎ目やアタッチの継ぎ目の線も丁寧にヘラで後を磨き消す丁寧な作業が行われます。
クリエイターの魂を守る「銅版転写」
クリエイターコラボにおいて最も気を使うのが「顔」の表現。形や柄に多少の個体差が出るのは手作りの良さですが、顔が変わってしまうと作家の作品ではなくなってしまいます。
そのため、全体の絵付けは手描きで行う一方で、目や顔の表情だけは作家の原画を忠実に再現するために、「銅版転写」という技術を用います。絵柄を彫り込んだ銅板に顔料を塗って転写紙と呼ばれる特殊な和紙に印刷し、その紙を陶磁器の素生地に水で貼り付けて模様を写す、日本の伝統的な技法です。
「釉薬つけ」の裏技
表面にガラス質の艶を出す釉薬づけの工程では、試行錯誤の末に行き着いた工夫が光ります。製品を指で持って釉薬にドボンと浸して置くと、どうしても指の跡が残ったり、置いた底の部分に釉薬が溜まり不良の原因になっていたそうです。
そこで現場の職人が考案したのが、触れずに釉薬づけを行うこと。底の穴に棒を差して製品を支え、そのまま釉薬に浸すことで、表面に指跡が残らず、均一で美しい仕上がりが実現しました。
繊細な筆遣いで描く上絵付け
上絵付の作業も細やかな作業です。完成品と見比べながら、同じ場所に筆で非常に細かい線を絵付けしていきます。少しのホコリや鉄粉が落ちただけでも不良品となってしまう厳しい基準の中、息を詰めるようにして絵筆を動かしていました。
さらに、SETOMANEKIにも使われる金の上絵付けでは、塗るのは「茶色い液体」。これを低い温度(約740度)の電気窯で焼き付けることで、液体に含まれる樹脂が飛んで純粋な「金」だけが残ります。人の手で行われる繊細な筆遣いが製品に命を宿します。
海外からの要望に応え続けた「中から外へ」の時代に培われた技術が礎となり、その技術が日本の節句を彩る薬師窯や、クリエイターの平面イラストを立体化する新たな挑戦へと昇華させた中外陶園さん。
粘り強い瀬戸の土とアタッチの技法、そして現場の細やかな工夫の数々。受け継がれた技術を守り、現代に合わせた製品が生まれる情熱が現場にはありました。





