光洋陶器が描く「土から食卓まで」
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- 光洋陶器が描く「土から食卓まで」。~自動化と手仕事が交差する多品種生産の現場~
陶磁器の国内生産量日本一を誇る美濃焼の産地、岐阜県土岐市を訪れました。訪問したのは、ホテルやレストラン向けの業務用食器から、世界中のバリスタに愛されるコーヒーツールまでを幅広く手掛けるメーカー、光洋陶器(KOYO)さんです。
1日に1万個もの食器を焼き上げながら、なんと9,000種類以上ものラインナップを展開する「多品種生産」の裏側には、美濃焼エリアでもトップクラスの設備投資による自動化と、機械には決して代えられない、人の目と手がありました。
巨大な湖の恵みと、輸出から自社ブランドへの道のり
美濃地方でこれほどまでに焼き物産業が発展した理由、それはかつてこの地域一帯に「東海湖」という巨大な湖が存在したことに遡ります。長い年月を経て湖の底に堆積したキメの細かい良質な粘土層が隆起し、今もこの地で採掘できることが、美濃焼を支える豊かな土壌となっています。
光洋陶器さんもこの地で創業し、1960~70年代にはアメリカ向けにハンドペイントのストーンウェア(精炻器)を製造し、輸出していました。その後、高度経済成長期に合わせて国内ホテル・レストラン用の洋食器へと大きく舵を切ります。かつては他社ブランドの製品を製造するOEMが中心でしたが、そこから脱却し、「自社オリジナルを作らなければ」と奮起。地道な努力を重ね、今では9,000種類にも及ぶ自社オリジナル製品のカタログを持つまでに成長を遂げました。
自動車工場さながら!?職人技を継ぐロボット
工場に足を踏み入れて最も驚かされるのが、その圧倒的な「自動化」のスケールです。産地内に多数の陶器メーカーがある中でも、これほどの大規模な設備投資を行い、オートメーション化を実現している企業はごくわずかだといいます。
例えば「ローラーマシン」と呼ばれる機械では、白い石膏型に土をセットし、回転させながら1日に約2,500個ものどんぶりを無人で成形していきます。さらに、成形直後の鋭利なフチを、濡れたスポンジでなめらかに拭き取る工程までもが無人化されていました。他にも陶磁器の原料となる土を成形するマシンなど様々な工程が自動化され、職人を助けています。
中でも極めつけは釉薬をかける工程です。自動車メーカーなどで使われるような産業用ロボットの先端を独自にカスタマイズし、ロボットアームがお皿を掴んで釉薬のプールへ絶妙な角度で浸していきます。自動化の目的は単なる省力化だけではありません。職人の手の動きをロボットにプログラミングし、伝統技術を未来へ残すための取り組みでもあります。
自動化の隙間を埋める、緻密な「人の目と手」
機械化を進めた一方で、品質の最終的な砦となっているのは、「人の目と手」でした。
陶磁器のパーツを組み合わせるアタッチ技術では、土の乾燥度合いを見分け、繊細な力加減が必要となり、機械化できません。
また、1250度~1300度で焼き上げる「本焼き」の工程では、釉薬が溶けて隣の食器とくっついてしまわないよう、窯のスペースを最大限に活かしつつギリギリの隙間を狙って、すべて人の手で窯詰めが行われています。
焼き上がった後の「検品」作業も人の目だからこその技術です。1日に1万個もの食器が焼き上がりますが、これをわずか5名ほどのスタッフが手分けして全量チェックしています。機械では見分けるのが難しい微細な鉄粉(黒い点)や穴を、わずか3秒で判別しています。
また近年では、不良品となった食器を細かく砕き、再び土に混ぜて新しい食器として生まれ変わらせるリサイクル土の取り組みもスタートし、環境に配慮したものづくりにも挑戦しています。
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たった3秒でわずかな鉄粉の黒い跡を見分けて不良品として取り除く
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不良品は砕いて土と混ぜリサイクル土として新しい食器へ生まれ変わる
「土から食卓まで」を直接届ける
地元商社に商品を卸すのが当たり前だった時代、光洋陶器さんは自社で販売部門を持ち、直接小売店や消費者に販売する道を模索し始めました。当初は産地内で反発を受けることもありましたが、その先見の明が実を結んでいます。現在では製造するだけでなく、一般の方に向けた工場見学を積極的に行い、産地の伝統と技術に触れる機会を通して、ものづくりの魅力を多くの人に届けています。
また、本社工場にはかつては出荷場だった倉庫を改装し直営のショップとカフェを併設。ただ工場見学をするだけでなく、「見学した後に、自社で作ったお皿に盛られた料理を実際に食べてもらう」という体験を通じ「土から食卓まで」のストーリーを提供しています。こうした取り組みにより国内はもちろん、海外からの評価も高まっている同社のブランド力を象徴する場所となっていました。
分業体制が主流の陶磁器生産において、企画・デザインから納品までの全工程を一貫して自社内で行っている光洋陶器さん。その工場では、ロボット技術を駆使した自動化と、繊細なアタッチ技術や窯詰め、検品といった「人の感覚が必要な部分」の交差により、品質と生産の安定が実現していました。
安定した品質と多品種生産により、食卓のニーズに応える柔軟なものづくりを追求し、うつわの可能性を広げている光洋陶器さんから工芸の作り手の新しい在り方を感じる視察となりました。





