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「私ならこう使う」マダムゆず ことフードプロデューサー神谷よしえさんによる、9つの食アイテム率直レビュー

一流シェフが愛用する調理道具や、百戦錬磨のバイヤーが展示会で「これは」と手に取るもの。その道のプロたちはどのようにモノを見て、どこをよいと思うのか。 ものづくりの今を捉える目利きたちの「見方」、「選び方」を大公開します。
実際に使ってみた率直レビューをお届けします
今回は、2008年からはじめたゆずごしょうを広める活動で「マダムゆず」の愛称で親しまれるフードプロデューサー、神谷よしえさんによる食の出展メーカーの「使ってみた」レビューです。
神谷よしえ|フードプロデューサー 台所だけの建物「生活工房とうがらし(大分県宇佐市)」で食を伝える活動を展開。 2008年からはじめたゆずごしょうを広める活動で「マダムゆず」と呼ばれ、星つきの有名シェフたちにも、作り立てのゆずごしょうが人気。 九州初の調味料ソムリエプロとして、年間100回以上の調味料講座を行ったり、「大分県乾しいたけ大使」として『大分県のしいたけ料理の本』なども出版。 6年半毎日アップしている「ごはん大好き(facebookページ)」に47か国に6万人以上のフォロワーを有す。上海・バンコク・ミラノ・ワルシャワ・プラハなどでおにぎりを握ったり日本食をPRする活動なども行っている。 2021年春には奈良町に「よしえ食堂」をオープン予定。
八百屋 半吾兵衛「かぐら南蛮ドレッシング」
「パスタに合いそう。パスタって鷹の爪や、ニンニクを入れたりするじゃないですか。だからかぐら南蛮の辛みって絶対に合う。特別具材を用意しなくても、これと和えればピリ辛の和風パスタになりますね。パスタ麺がなかったら、うどんやそうめんでもいいと思う」
香辛料が効いているので、ちょうど濃口醤油も加えて、豚肉の角煮も作れますね。他にもこれからの季節は揚げ餅にかけたり。八角も入っているので、中華風にも使えるし、いろいろなアレンジレシピができそうです」
翠窯(すいよう)「カレー皿 黒瑠璃」
「伏せたらヘルメットみたいな形。家庭の日用皿としては、何枚か重ねた時に安定して置けるかはちょっと気になりますが、アールの使い方が珍しいですね。ふちに引っ掛かりがあるので装うときに持ちやすいです。
何より、黒という色が面白い。料理の世界って今まで黒い器ってあんまり使わないので、こういうお皿は新鮮です。白いごはんにも映えるし、夏野菜カレーとかは、具材にカラフルなパプリカとかを入れるときれいですね。福神漬けの赤も引き立ちます」
「せっかくなのでこの黒いお皿の上で、365日毎日違うカレー、なんてチャレンジしたら楽しそう。今日は普通のゴロゴロカレーを合わせましたが、他にもスープカレー、黄色が入っても映えるので、オムレツを入れてオムカレーにしても。サフランライスも間違いなく色合いがきれいなので、キーマカレーも映えます。

量も家庭らしくたっぷり装ったり、ホテルやレストランのように少しだけにして雰囲気を変えてみたり。いろいろアレンジを楽しめそうです」
家事問屋「ホットパン」
「手に持つとしっかりとした重量感があります。持ち運びや収納のときは少し不便を感じるかもしれませんが、重いのは安定感があって火の回りもゆっくりで使いやすい面も。深さがあるので、山盛り具材を詰めたつもりでも、焼いてみるとまだまだ入りそうです。具だくさんのホットサンドが作れますね。今回は8枚切りのパンを使いましたが、6枚切りでも良さそうです」
焼き上げると耳の内側がぐるりとプレスされるので、食べる時にも具材がこぼれにくいのが安心です。具材が大きめのゴロゴロカレーでカレーパンも作ってみましたが、こちらも具材がこぼれずホットパンの方に汚れもなし。 家事にまつわる多くの商品って、使う人の気持ちになっているものが案外少なかったりします。家事問屋さんは、そのあたりがきめ細かく作りこまれているなと感じます」
家事問屋「小分けボール・小分けザル」
「軽くて安定感があって、変に小細工がないのがいいなと思いました。 ステンレス系のボールは、具材を冷やしておく時に便利です。大きいサイズだと場所を取りますが、これなら、冷蔵庫にラップしてサッと入れられますね。 他にも使い方はいろいろありそう。例えば大葉を細かく刻んでアク抜きしたい時や大根おろしをして水を切りたいという時に、これくらいの大きさで重ねられるザルとボウルってなかなかないので重宝しそうです」
「ちょっとだけ粉ふるいたい時や、卵の黄身と白身を分けたりする時、お砂糖やお塩をはかる時にも。お好み焼きをおうちで作る人は、ここに具材を入れてもいいですね」

※こちらは12月上旬より中川政七商店より卸販売スタート致します。
家事問屋「うらごし・油はね」
「油はねってキッチンの大問題です。揚げ物が億劫になる理由は油はねにあると思ってます。それをおさえられて、なおかつこしザルとしても使えるのがいいですね。ありそうでないアイテムだと思います。 裏ごしする時に普通のメッシュのザルでやってしまうと、底の部分が凹んでしまったりする。これはゴムべらや木べらで裏ごししても安心な丈夫さです。私ならおせちなどのきんとんを作る時や、ゆずごしょうの裏ごしに使いたいですね」
家事問屋「箸水切りザル」
「大分は竹の産地でうちの工房は、お箸が全部竹なんですね。乾かすのは課題です。いつもお箸用の場所を作って乾かしていましたが、これがあれば他の食器を乾かす時に、一度で済んじゃいます。網目も凹凸があまりないのでスポンジで簡単にお手入れがしやすそうです。 フォークやナイフ、箸置きを入れておくのにも便利ですね」

※こちらは12月上旬より中川政七商店より卸販売スタート致します。
かもしか道具店「塩こうじの甕」
「塩麹を作る時には発酵に空気が必要なので、これはフタが密閉されていないつくりがちょうどいいですね。つい先日、まるまる一本分の大根おろしと、豚バラ、水菜、白だし、塩麹で味つけした雪見鍋をつくりました。カボスを絞ったり、ちょっとポン酢足したり、ゆずごしょうも入れたりして、シンプルな素材が充分に楽しめました。塩麹をベースにいろいろとアレンジを楽しめます」
「これはせっかくきれいな見た目なので、塩麹のかわりにおかず味噌を作って食卓に出してもいいんじゃないかな。牛肉のバラ肉やミンチなどの肉の油を利用して味噌と炒めて、それにネギ入れて火を入れたら、簡単おかず味噌の完成。テーブルに置いておにぎりにつけながら食べたら最高ですよ。味噌をお湯でのばせば味噌汁代わりにもなります。 塩こうじの甕というネーミングにとらわれると手を出しにくくなりますが、塩麹にこだわらないで、いろいろな使い方を考えるのもおもしろいと思います」
かもしか道具店「すりばち」
「私の持論としては、すり鉢は基本はやっぱり大きいものがいい。

ただ、昔ながらの大きなすり鉢は、シンクの下の棚なんかにしまっていたと思いますが、これは食器と同じように食器棚で出し入れできて、うつわとしても使えるところがすごく便利です。

二人分くらいの白あえや胡麻和えなら、ごまを擦って食材と和えたら、このまま食卓に出せます。和え衣を先に作っておいて、冷蔵庫にしまうこともできる」

「私の持論としては、すり鉢は基本はやっぱり大きいものがいい。 ただ、昔ながらの大きなすり鉢は、シンクの下の棚なんかにしまっていたと思いますが、これは食器と同じように食器棚で出し入れできて、うつわとしても使えるところがすごく便利です。 二人分くらいの白あえや胡麻和えなら、ごまを擦って食材と和えたら、このまま食卓に出せます。

和え衣を先に作っておいて、冷蔵庫にしまうこともできる」 以前なら一回擦ったごまをゴムベラですくってボウルに入れて混ぜて、お皿によそって、とやっていたのが、これなら1回で全部終わるんです。

ごまの目詰まりもしにくい作りで洗いやすいのもいいですね」 実はすり鉢は、よしえさんにとって特別な意味を持つ道具です。
すり鉢のある風景
『私がずっと続けているゆずごしょうづくりの講座は、「縁側でばあちゃんが作るゆずごしょう」がテーマなんです。そこにはフードプロセッサーではなくて、すり鉢が必要です」
「今ならゆずごしょうもすりごまも、買ってきて済ますこともできます。それでも、わざわざ道具を使って擦って作ってくれたということは必ず、相手に伝わります。すり鉢そのものが大事というより、すり鉢が象徴する『手間暇』にすごく意味がある。あのすり鉢が当たる『ゴリゴリゴリ』という音が御馳走なんですね。

その音を聴きながら、風景や風を感じながら『擦る時には、鉢の下にふきんを敷くんだよ』『すりこぎは力を入れずに持つんだよ』とかそんな何気ない会話がばちゃんから孫に伝承されることもある。そういうすり鉢のある風景を、私は残していきたいと思っています」

こう聞くと、すり鉢をはじめ、使う道具やうつわにはさぞ、こだわりがありそう。そう思って聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
道具を作る人から料理する人、食べる人へ
「実は私、うつわや道具は『絶対このブランドじゃなきゃ』のようなこだわりがあまりないのっ。

最近、本当によく料理をしてみんなに食べてもらうんですよ。でも作る料理は素材重視のお手軽なものばかり。それでもみんながおいしいと言ってくれるのは、料理を作る私から食べる人に伝わる何かに、その手前のうつわや道具を作った人の想いいも乗っているからだと思っています。

道具を作った人には、「こう使って欲しい」という思いがある。料理する人がその想いくみ取って、活かして料理にして食卓に出せば、おいしさって倍・倍になっていく。分断させないでつなげていったところに、『おいしい』が生まれるのだと思います。

私は食卓を囲むとき、前もって食べる人に「何が食べたい?」「何が好き?」と聞くことにしています。あわせて、どんなうつわにしようかと前もって食卓に並べてみたりもします。笑顔で食べる光景を想像しながら、その時にうつわを作った人のことも考えます。作り手さんは何を盛りつけることを想定して、このうつわを作ったんだろうなんて考えてみるんです。じゃあ、こうしたら活きるかな、こういう色あいなら楽しそうかななどと想いながら料理に反映させたりします。
食卓って「連続ドラマ」なんですよね
例えば今回の塩麹壺なら見た目がきれいだから、塩麹だけじゃなく肉味噌を入れて食卓に出せるようにしたらどうだろう。黒いカレー皿は色が映えるから、毎日違うカレーを盛りつけたら楽しそう。インスタに毎日同じお皿でカレーが並ぶとわくわくするかなとか。

ホットパンがあれば、毎日カレーをはさんでカレーパンも毎日食べれる?なんて想像したり。家にコーラがあったら、それを飲むだけじゃなく、料理に使えないかなと考えてみる。今は亡き母の口ぐせですが、食卓って毎日毎食が連続ドラマのように繰り広げられるものだと思うんです。これってきっとどこの家でもあることだと。

私なりの見立てではあるけれど、作り手さんの思いを料理をする人がまた表現して、食べてもらって、『おいしい』って笑顔が生まれる風景までつなげていけたら、みんながしあわせなんですよね」

それには、食べてくれる人の存在も欠かせない、とよしえさんは続けます。
うつわと料理の関係
「実は私、3人の子どもたちに幼稚園、小学校、中学・高校と、毎日毎日お弁当を作ることが苦行でした。当時はお弁当だけではなく、朝ごはんに晩ごはん、時にはおやつまで、一日中食べることを考えている、それは苦痛以外の何ものでもなかったんです。

それが子どもたちが成長して家を出て、ごはんを作らなくてよくなった。お弁当で悩む日がなくなることをどんなに待ち望んでいたことか。でも作る必要がなくなって初めて、食卓の連続ドラマがなくなったことに失望したんです。

誰かに料理を作る機会があったことのありがたみに気づきました。わざわざ奈良に移住して、これから食堂を開こうとしているのは、『そこに食べてくれる人がいるから』という思いは大きかったからかもしれません。

それが今年の春、思いがけずコロナになって子どもたちが家に戻って、また家族で食卓を囲むという毎日が始まった。

苦行じゃないんだと気づいた私が作る料理は違っていました。「これを食べさせたいな」とか「何を食べたい?」と聞いてみたり考えたりする余裕ができて、家族での食卓もひとりの食卓も盛りつけ方やうつわもいろいろと変わってきたと思います。

私だけでなく多くの人にとっても、今年はおうちで料理をすることの意味が大きく変わった年だったと感じています。

向き合う機会が増えた分、『この道具・うつわを活かすならどんな料理、盛りつけになるだろう』と想像してみるのは、料理やうつわ選びの時間を楽しくすると思いますし、こうした展示会でバイヤーさんがうつわや道具を選ぶ時にも、そんな料理や食卓のシーンを想像できるかどうかが、とても大切なんじゃないかなと。

うつわが料理をのせるステージなら、空っぽのステージでは何も始まらない。料理もステージがないと食べる人に届けられない。うつわ、食材、味つけ、盛りつけ、バランスよくいろんなことがつながった時に、はじめてその人に届く気がしています。そのドラマはたくさんの人をしあわせにすると思います。その連続ドラマが毎日、毎食続いて、しあわせの連鎖になってほしいですね」
よしえ食堂について
今回取材させて頂いた、神谷よしえさんのお店が2021年、奈良町にオープン予定です。

<よしえ食堂>

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