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sioの鳥羽さん絶賛。1つ星レストランの「美味しい」を支える道具たち

たとえば、一流シェフが愛用する調理道具や、百戦錬磨のバイヤーが展示会で「これは」と手に取るもの。その道のプロたちはどのようにモノを見て、どこをよいと思うのか。

こちらは、コロナ禍でリアル展示会になかなか足を運べない中、目利きたちの目を借りて今の日本のものづくりを眺めてみようという企画です。
鳥羽さんがこよなく愛する道具たち
誰もが「ステイ・ホーム」を余儀なくされた今年の春、「#おうちでsio」というレシピ投稿が大反響をよびました。

秘伝のはずのお店のレシピを惜しげもなくSNSにアップしたのは、一つ星レストラン「sio」の鳥羽周作シェフ。実は鳥羽さんはレシピだけでなく、お店で使われている調理道具やカトラリーのことも積極的に発信されています。その中にはお箸やグラスなど、大日本市出展メーカーのものも。
(2020年9月28日に刊行された『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』 (小学館) にも、道具紹介ページが)

sioの「美味しい!」を支える道具たちと、鳥羽さんが大切にする道具選びの視点を伺うべく、憧れの代々木上原のお店にお邪魔してきました。
お店をたずねると、さっと厨房に立つ鳥羽さん。ひとつめの道具を実際に使っているところを見せてくれました。
鳥羽周作さんプロフィール
1978年5月5日生まれ。
サッカー選手、小学校教員を経て、32歳で料理の世界に飛び込んだ異色の経歴の持ち主。
「DIRITTO」「Florilege」「Aria di Tacubo」などで研鑽を積み「Gris」のシェフに就任。
2018年7月、オーナーシェフとして自身のすべてを出し尽くしたレストラン「sio」をオープン。緊急事態宣言後に、お店のレシピを公開したことがきっかけとなり、2020年9月28日に初のレシピ本『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』を出版。
やさしい味になるパスタのお箸です。 ヤマチクの「パスタ箸」
「これ、ヤマチクさんのパスタ箸です。sioの調理用お箸は、全部ヤマチクさんなんですよ」
「うちは、パスタに対するこだわりはめっちゃ強いです。茹でる前に使う麺は全部チェックして、ダメなやつは一本ずつ抜く。それくらいパスタに対して高い熱量に、応えてくれたのがこのパスタ箸です」

ヤマチクさんは熊本で50余年続く、竹のお箸専門メーカー。実はこのパスタ箸、もともとお客さん用にヤマチクの竹箸を使っていた鳥羽さんが、「パスタを作るときに使える箸があったら」と相談したことから生まれたものでした。

鳥羽さんが使うのはsioのために細部がカスタマイズされたものですが、現在家庭用にアレンジされた「パスタ箸」がヤマチクさんから販売されています。

ヤマチクのパスタ箸の商品詳細はこちら
https://www.dainipponichi.jp/shop/g/g5103/

 
(ちなみにこちらが盛り付け用のお箸。持ち手部分は四角く、先に行くほど円く細く作られている。「軽くて持ちやすく、細かなものも掴みやすい」と鳥羽さん)

「パスタを茹でる時って、トングでやったりすると麺が傷ついちゃいます。表面の粉が落ちすぎちゃうんです。でもこの箸で茹でると、パスタが傷つかずにやさしく茹でられる」
「大事なのが箸の太さで、太すぎても細すぎてもダメなんです。これはちょうどよく力加減ができる太さで、竹だから軽く、握った時のフィット感もいい」
ヤマチクさんが試作品を持ってきては鳥羽さんが試す、を何度も繰り返してたどり着いた究極のパスタ箸。その威力は麺と食材を和えるときにも発揮されます。

「具材と和える時にトングを使うとまた麺が傷ついて意味がないので、ここでもパスタ箸でやさしく和えてあげます。ボールに入れて混ぜるだけなのに、よく味が馴染んでめっちゃおいしくなるんですよ」
「盛り付けるときにだけトングを使って、細部の仕上げはまたヤマチクの箸です。よくレストランではピンセットを使うんですが、この箸なら長さがあるので、料理を俯瞰で見ながら直せるのがいいんです」
(細かな作業も楽々。全体のバランスをみながら仕上げへ)

さあどうぞ、と鳥羽さんが出してくれたのはSNSでも人気だった「無限パスタ」。
しばし仕事を忘れておいしさを噛み締める取材班に、さっと添えてくれたお水のグラスこそ、鳥羽さんふたつめの愛用道具です。
「マジで水の味が変わります」THEの「THE GLASS」
「レストランって、お茶を出さないところはあっても水を出さないお店は無いですよね。だから使うグラスは他と一番違いが出るものと思って、選んだのがこれです」

そう言って鳥羽さんが手に取ったのが「THE GLASS」
世の中の新しい定番を生み出す、をコンセプトに掲げるブランド「THE」のロングセラーアイテムです。鳥羽さんは毎朝、このTHE GLASSで水を飲むのが習慣だそう。

「水は、マジでグラスで味が変わるんですよ。これで飲むと、ホントに水が丸く、甘く感じるんです」

ここの設計がダントツにいい、と鳥羽さんが絶賛するのが、口に触れる縁の部分。
「あまり薄手だと、飲むときにやや怖い。これは薄すぎず、口の幅とグラスの円形のフィット感がめっちゃいいんです。縁に口をつけて水が入ってくる時のなめらかさが、他と全然違う。なんなら『水グラス』として売ったほうがいいんじゃないかって提案したいくらい (笑) 」
「sioではテーブルの大きさに合わせてショートサイズでお客さんに出してます。これが手の収まりも、持った時の重さもちょうどいい。それに、置いてあるだけで絵になるんですよね」
(THE GLASS はショート、トール、グランデの3サイズ。写真奥がsioで使用しているショートサイズ。手前がトール)

THE GLASS商品詳細はこちら
https://www.dainipponichi.jp/shop/g/g4547639451903/

パスタ箸やグラスのお話を伺っていると、鳥羽さんは料理と道具を切り離さず、どちらもお客さんに届ける「最高の体験」として向き合っているように感じます。
それを象徴するようなエピソードがもう一つ。sioで使われるテーブルナイフです。
「包丁研ぎが、料理の味付けになる」鳥羽さんの考える料理と道具の関係。
「お肉のおいしさは包丁の切れ味で左右されます。だから厨房ではすごくよく切れる包丁を使う。でも、これをお客さんのところへ持っていって、切れ味の悪いナイフで切ったら、体験として全く違っちゃうじゃないですか。

だからうちでは厨房も包丁もお客さん用のナイフも、3日に1度は研ぎに出します。そのために職人さんと年間の契約を結んでるんです。この仕組みがあれば、うちも助かるし、職人さんも安定した仕事になる。この3日に一度の研ぎが、ひとつの料理の味付けになっているんですよ」
(左が厨房用の包丁、右がお客さんに出すテーブルナイフ)

ふるまう料理が全て、ではなく、お客さんがお店に来て、食事して帰るまでに触れる全てのものが「美味しい」を支える。だからカトラリーひとつ、鳥羽さんは質を妥協しません。できる限りものづくりの現場にも自分で足を運んで、「同じ目線でちゃんとやれる人とだけやる」そう。プロの料理人は、道具の目利きもプロでなければ成り立たないのかもしれません。

「そういう意味では、これからのレストランは『体験』のプラットフォーム。料理人は、プラットフォーマーとしての価値がすごく高いと思いますよ」
「調理道具やカトラリーって、試してから買うことはそうそうありません。今はネットで買い物をすることが増えているから余計にそうですよね。だから体験できる場所としてのレストランが、ちゃんと愛を持ってプロダクトを語れるか、はすごく大事です」
全ては幸せの分母を増やすために。
鳥羽さんは、自分が出会った「これは」と思うものはお店で使うだけでなく、率先して周りの人にシェアしています。THE GLASSは他のお店の開店祝いに贈ることもあるそう。ヤマチクのお箸のことも『#おうちでsio』の中で紹介されています。

「自分たちがいいと思っているものをオープンソースにすることで、まだsioに来たことがない人にも、このコップで感じる幸せをおすそわけできたら最高じゃないですか」

自粛期間中のSNS投稿も、お店の道具や情報をオープンにすることも根っこは同じ。そのほうが「幸せの分母」を増やすことに繋がる、と鳥羽さんは言います。

sioの提供する「幸せ」をお店の外でも体験する人が増えれば、いつかはその人たちがまた、お店を訪ねてくれるかもしれません。

「僕らレストランって語り部です。だから道具も、語れるものしか使わないんです」

sioの「美味しい」の秘密が、少しだけわかったような気がしました。
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